遺言は自らの置かれている状況や遺産の内容、法的なリスクを考慮して様々な形式を選ぶことができます。その中でも特に選択される可能性の高い「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」についてどのような違いがあるのかご説明します。
まず自筆証書遺言は、遺言者が遺言書の全文・日付・氏名を自筆で書き、これに押印することによって成立する遺言をいいます。縦書き、横書きや用紙は自由に選ぶことができます。
なお、自筆証書遺言に相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については自筆せずに、パソコンで作成したり、コピーを添付することも可能になりました。(目録の全てに署名押印は必要。)
自筆証書遺言のメリットとしては
・費用がほとんど掛からないので、手軽に書ける。
・遺言を作成したこと及びその内容を他の人に知られないようにできる。
といったことがあります。
しかし、デメリットもありその内容としましては
・変造や紛失の恐れがある。
・相続発生時に遺言書が見つからない恐れがあり、遺言の実現が不確実。
・遺言を見つけた場合は、家庭裁判所に検認の申し立てが必要。(検認をしないで遺言を執行すると、5万円以下の過料に処せられる。)
※検認とは遺言書の存在や内容を相続人に知らせ、遺言書の偽造や変造を防ぐための手続き(相続人全員の戸籍謄本等の提出が必要で、手続き自体1ケ月以上かかります。)
・遺言の方式に不備があると無効になる可能性があり、内容の曖昧さによって紛争の恐れがある。
・『全文自筆』というのはかなり大変な作業になり得る。
ということがあります。
ただし、「自筆証書遺言保管制度」を使い、遺言者本人が自筆証書遺言を法務局に保管すればデメリットが多少軽減され、変造・紛失の恐れはなくなり、検認の申し立ての手続きも不要になります。
そして公正証書遺言は、遺言者が公証人役場に出向き証人2人以上の立会いのもとで、公証人が遺言者の意思を文書にして作成する遺言書をいいます。費用は掛かりますが、公証人に出張してもらうことも可能ですので、公証人役場に出向くことができない方でも、意思能力さえしっかりあれば作成は可能になります。
公正証書遺言のメリットとしては
・家庭裁判所の検認手続きが不要で、遺言者の死亡後、直ちに遺言の執行ができる。
・遺言の内容、真偽などについてのトラブルを未然に防止することができる。
・原本は公証人役場に保管され、万が一遺言者が紛失したとしても再発行請求ができるので、改ざん、紛失のおそれもない。(故人が公正証書遺言を残していた場合、相続人等は公証役場に遺言が保管されているかどうかを照会することができる。)
※照会手続きはどこの公証人役場でも可能でありますが、謄本の請求は原本の保管された公証人役場でしなければなりません。
ということがあります。
一方でデメリットとしては
・公証人手数料が掛かるためそれなりの費用になる。
・一人で手軽にできることではなく、公証人役場への原案を提出したり保証人を揃えたりする必要があることから、専門家の援助を受けなければ成し遂げるのは困難。
といったことがあります。
以上のように自筆証書遺言と公正証書遺言は各々特徴や長所・短所がありますが、相続発生後の手続きまで見据えると公正証書遺言の方がメリットが大きいと思われます。ですが状況によっては自筆証書遺言でも問題ないこともありますので、費用の負担の大きさやご自身の現状・意思をよく検討して選択しましょう。
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