誰にとっても、遺言書を作成しておくことは望ましいことです。遺言書がないと、相続財産の整理に手間と費用がかかり、残された家族に負担をかけることになります。
さらには、家族間で相続財産をめぐる紛争を生じさせることにもなりかねません。中でも以下のケースに当てはまる場合には遺言書を作成する必要性が特に高いといえます。
⑴法定相続分と異なる配分をしたい場合
被相続人が亡くなられた場合、遺言書がない場合は原則は相続人が法で定められた分量の財産が相続されることになります。そのような中で例えば「三女は結婚もせず、自分の面倒をよく見てくれたので、より多くの財産を分け与えたい」と考えていたとします。
そのような場合は、遺言書を作成することで、三女により多くの財産を相続させることができます。
⑵相続人の人数・遺産の種類・数量が多い場合
遺言書がなければ、相続人間で遺産分割協議が行われます。相続人が多数いたり、遺産の種類が土地・建物・預貯金・現金・株式・車など多種にわたる場合であれば、誰が何をどれくらいについてなかなか話がまとまらないものです。
そして、もともと仲が良かった相続人達が、相続をきっかけに良好な関係が壊れてしまう
ということもよくあります。
そうならないためにも、相続人や遺産が多い方は特に遺言書を作成することをお勧めします。
⑶配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合
被相続人に子供がいない場合は、配偶者と義理の兄弟姉妹(遺言者の兄弟姉妹)が相続人になる可能性が高いです。配偶者と遺言者の兄弟姉妹は元々は赤の他人ですから、紛争になりやすいです。
しかし、生前に遺言書を作成しておけば、そのような無駄な紛争は避けることができます。兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言により財産のすべてを配偶者に相続させることもできるようになります。
⑷農家や個人事業主の場合
農家や個人事業主で事業を承継させたい場合、遺言書を残しておけば相続によって事業用の資産が分散することを防止できます。
例えば、父が会社経営をしていて会社の土地建物(5,000万円)と預金(2,000万円)をもっており、子供が息子一人娘一人(妻はすでに他界)がいたとして、息子に会社を継がせたいとします。
この場合、遺言書がなければ法定相続により7,000万円相当の相続財産を息子と娘で平等に分け合い、それぞれ3,500万円相当の財産を相続することになるので、会社の土地建物は息子と娘の共有物になってしまうため、息子の会社経営に支障が出てしまいます。
そのような事態を避けるため父は遺言書を作成することが必要です。遺言書で土地建物を息子に相続させ、預金を娘に相続させれば、土地建物が共有となることを回避できるのです。
⑸相続人以外に財産を与えたい場合
法定相続人以外のものは当然相続されません。ですので仮に世話をしてくれた長男の嫁に財産を相続させたい場合には遺言書を書く必要があります。
長男の嫁には「特別寄与料」として金銭請求することができるようになりましたが、とはいえ請求したとしても協議が整わなければ家庭裁判所への申し立てが必要となりますし、証拠資料なども必要となりますので、負担が大きなものとなり断念せざるを得なくなりかねません。
ですが、遺言書があれば長男の嫁は負担を背負うことなく、直ちに財産を受けることができるのです。
相続人がいない場合は相続財産は国庫に帰属することになりますが、遺言書を残しておけば、自分が世話になった人や団体に財産を与えることが可能になります。
⑹その他
・先妻と後妻のそれぞれに子供がいる場合
・配偶者以外との間に子供がいる場合
・相続人の中に行方不明者や浪費者がいる場合
・相続人同士の仲が悪い場合
⑺まとめ
以上のように遺言書は様々な場面で役に立ちます。相続人が配偶者と子供一人だけで相続財産も決まったものであれば相続も問題なくできると思いますが、多少なりとも相続でトラブルが起きることが感じられるときは遺言書を書くことをお勧めします。
相続・遺言書作成でお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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