遺言は、遺言者が自分が死亡した後に、「財産を○○に残す」とか「実は隠し子がいた」など、相続人・その他の人へ伝えたいことを死亡する前に残しておくことです。そのような最終的な意思表示をする遺言書でできることはどのようなことでしょうか?
⑴狭義の相続に関する事項
●推定相続人の廃除・廃除の取消し
廃除とは相続人から相続権を奪うことができる制度ですが、推定相続人に子がいる場合は当該相続人を廃除したとしてもその子が相続することはできます。
●相続分の指定・指定の委託
相続には原則として法定で相続分が決まっているのですが、遺言によって相続分を変更することができます。ですが兄弟姉妹を除く推定相続人には「遺留分」という相続権がありその範囲においては遺言書の効果が及ばなくなります。
●特別受益の持戻しの免除
特別受益とは、相続人の中に被相続人から財産を贈られるなど特別の利益を受けた者がある場合に、その相続人の受けた利益のことをいい、原則として特別受益分を遺産の中に入れて具体的相続分を計算することを特別受益の持戻しといいます。被相続人が遺言書で特別受益の持戻しを免除してほしい旨の意思表示をすれば、持戻しをされなくて済み結果特別受益者の相続分が減額されないことになります。
●遺産分割の方法指定・指定の委託、遺産分割の禁止
遺産分割は物理的に割ることができない遺産をどう分けるかを決めることをいい、遺言書でそのような遺産の分けかたを決めることができます。遺産分割を禁止することができる期間は5年間までになります。
●共同相続人の担保責任の減免、加重
相続人が遺産分割によって取得したものに瑕疵がある場合、他の共同相続人は代金減額や損害賠償などの責任を負うのですが、遺言によってその責任を排除したり、修正することができます。
●遺贈の減殺の順序・割合の指定
推定相続人が遺留分を権利を主張した場合、遺言で取り戻される遺産の順序や割合を指定することができます。
⑵遺産の処分に関する事項
●遺贈
遺贈とは遺言によって相続人以外の人に財産を与えることです。財産を受ける側の意思に関わりなく贈られるため、「贈与」とは法律上区別されています。
●財団法人設立のための寄付行為
●信託の設定
⑶身分上の事項
●認知
認知とは婚姻関係によらずに生まれた子を自分の子だと認める行為。遺言で軽はずみに認知すれば残された相続人を傷つけることにもなり得ます。
●未成年者の後見人の指定
●後見監督人の指定
⑷遺言執行者の指定・指定の委託
遺言執行者は遺言者が亡くなったときに、実際に遺言に書かれていることを実行する者です。遺言執行者は遺言の執行のためであれば原則どんなことでもできることになるので、トラブルを起こさないような堅実な方の指定が大切です。
⑸学説で認められている事項
●祖先の祭祀主宰者の指定
●生命保険金受取人の指定・変更
生命保険の受取人の指定・変更は遺言でできることではありますが、将来トラブルにつながる可能性が高いので遺言ではなく生きているうちに指定・変更したほうが良いです。
⑹付言事項
遺言でお世話になった人への感謝や、家族や自分が大切にしてきたものへの気持ちや願いを綴ることができます。
⑺最後に
遺言は法律で定められる事柄が決められています。もちろん遺言で定められるのは、自分が持っている権利の範囲内のもののみです。
遺言の内容によっては相続人に遺恨や禍根を残しかねないので慎重に作成しましょう。
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